ワーキングプロセス
敷地選定の助言( 敷地が未定の場合)
敷地には様々な条件が付加されています。たとえば、
- 法的制限
- 地質、地盤強度
- 立地(環境、利便性、ライフライン整備)
- 方位、高低差、周辺建物
など、複数の条件を整理して、敷地が持っている魅力(「敷地力」と呼んでいます)やハンディキャップを見極め、理想実現に向けて適切か否かを助言します。
基本計画
敷地が定まりますと、次は形を目指して作業を進めるのですが、第一に行なうのが設計コンセプト(主旨)の組み立てです。 この設計コンセプトから導き正すのが「テーマ」です。
- 設計コンセプト(主旨)
- 「何故この建物を必要とするのか?」から出発します。
- クライアント様の思いが実を結び超・満足感を達成すべく、論理的且つ感性的に整理し、理想像をイメージできるようにします。この理想像を目指す為に端的な言葉で表したものが「テーマ」です。
- 私たちは「テーマ」を「理想への道標(みちしるべ)」と定義しています。「テーマ」が決まれば、以後、分かれ道などに出会っても平気です。
- この「みちしるべ」が迷うことなく理想のゴールへ導いてくれます。よりまして、この設計コンセプト作りには妥協することなく、充分に時間をかけます。
- スケジュールの立案
- 「基本計画から建物完成までの全体スケジュールを作成します。
- このスケジュールに沿って進むことを基本としますが、途中で必要があれば見直しをし、常に現実的なスケジュールにしておきます。
- 条件整理検討とプランの立案
- 設計コンセプトを基に敷地条件・法規制などを考慮し、現地調査や法的調査を経て、ボリューム計画図を作成し、更に絞り込んでマスタープランを作成します。
- 状況によって複数の案を作成します。
- 概算工事費と資金計画
- マスタープランを精査するうえで、構造や工法の検討を経て概算工事費を算出し、資金計画に照らし検証してマスタープランへフィードバックします。
- 目的達成のために資金計画は大変重要であり、調達方法や調達先対応などについて、提案・助言・折衝をします。
資金計画の目途を予測し、マスタープランを完成します。
- 設計・監理の契約
- 基本設計に入る前に「建築設計・監理業務委託契約」に調印していただきます。
- 設計・監理に関する業務内容及び条件を確認していただく為に、口頭による他に建築士法に定められた書面にて詳しく説明します。
基本設計
- 調査
- 設計の精度を上げるため、二つの調査をします。
- 1).敷地測量
- 2).地盤調査
- 一般図面作成と構造及び設備計画
- マスタープランを前進させ、一般図面(配置図、平面図、立面図、断面図、仕上表)を作成する為、構造計画と設備計画をします。
- 構造計画は基本計画で検討した構造や工法を前提に、安全上及び効率上の最適な数値を導き出すとともに、良質なデザインへの一助を目的とします。
- 設備計画は構造計画に準じますが、快適性及び効率性を図り、且つ良質なデザインへの一助を目的とします。
- この二つの計画を含め、概算工事費を再度精査し、一般図面に反映・完成します。
実施設計
- 設計図書
- 図面には意匠図(デザインや使い勝手を描く)、構造図(構造計算より安全性を導き描く)、 各種設備図(電気配線や給水排水や空調などを描く)、外構図(建物の外部を描く)、法的図書と構造計算書などがあります。
- 一般図が確定すると、それを条件に構造計算を行ないます。
- まず初めに経験を基に見当をつけて主要構造部(柱、梁、壁)寸法を決めます。
- これを仮定断面といい、この仮定の寸法にて意匠の詳細図や設備図の設計に進みます。
- 実施設計進行途中に数度の設計会議をクライアント様と開催し、ご要望を盛り込み、問題を解決し、フィードバックを重ね完成に至ります。
- スケジュールに沿って進行しますが、途中のご要望変更の度合いによりスケジュールを調整します。
施工者選定及び発注への助言
施工者は特命の場合を除き、複数社による指名競争入札を行い決定します。収集した参加者の情報と提出された見積書の妥当性、そして本物件に対する意欲などを鑑みて決定します。提出された見積書は明細を精査し、各社の比較検討書を作成したえうで、厳正なる助言をします。その助言を判断材料にして、クライアント様が決定します。
また、工事費が目標価格に達しない場合は、選別した数社と値交渉を行い、場合によっては設計変更や再見積り徴収により、工事請負金額を決定し、契約調印します。
許認可手続き
工事を開始するには建築確認申請の認可が必要となりますが、建築確認申請の提出前に完了しておかなければならない許認可があります。
この許認可は敷地条件によって異なり、皆無の場合も多数の場合もあります。許認可はその種類によって審査期間が異なる為、実施設計中に手続きできるものは全て行なっておきます。
事前の許認可が整った後、実施設計が完了し、施工業者による工事金額の決定の時期を判断し、建築確認申請を提出します。これは審査に伴う設計変更、または見積り金額に伴う設計変更のいずれに対しても、手戻りなどを最小限にする為です。
今、姉歯建築士の偽装事件により改定された建築確認申請手続きの厳格化が、善意の増築に多数の困難をもたらしています。
工事監理
契約調印が済み、起工式を行い工事着手となります。契約にのっとり工事完成までの全体工程表(マスタースケジュール)を作成し、このマスタースケジュールを基本に各工事の流れを把握し、定期的な会議(定例工程会議)を開催します。
- 工程
- 定例工程会議では直近の週間工程表を作成し、工事進行状況の確認と対策、工事細部の問題提起と解決策、その他工事に関する報告・連絡・相談を徹底し、設計図に沿って円滑に工事が進行するように指導します。定例工程会議には必要に応じてクライアント様に出席をしていただき、ご要望などをうかがいます。
- そして、設計図に対して変更が生ずる場合は、施工側の意見を踏まえ検討し、一致協力を指導し、ご要望に沿うように導きます。
- 品質
- 工事品質は材料・製品のメーカー品質と施工精度による技術品質の他に、精神的な品質(品質維持と丁寧な作業)があります。弊社は経営理念どおり、精神的な品質(品質維持と丁寧な作業)を重視し指導します。品質はデータによる事前確認と、検査による精度確認と、心がけによる養生確認で守られます。
- また、工事期間中に生じるご要望による変更事項については、完成後のトラブルにならないように、その都度、施工者に変更見積金額(特に増額の場合)とスケジュールへの影響の有無の提示を求め、双方合意のうえ工事を進めます(工事に緊急を要する場合は事後提示の場合があります)。
- 工事費
- 弊社は請負契約金額の増減が生じないことを目標にしており、変更によって増額が生ずる場合は、安全性、機能性、品質性に支障がない範囲でVE(バリュー・エンジニアリング=機能性を備えたコストダウン)提案を致します。請負金額に対して今いかなる状況なのかを、常に把握し判断します。
- 検査
- さて、工事期間中には様々な検査を行ないます。意匠、構造、設備に関る多様な検査項目がありますが、法的検査は所轄官庁または指定検査機関の立会いで行ないます。
- 法的検査は工事中間検査と工事完了検査が主なものであり、検査前に検査用の申請手続きを行い、現場検査を経て、検査済証(合格証)が発行されます。全ての工事が完了すると、弊社の検査を経て、クライアント様による検査を行ないます。検査による指摘部分の是正を完了し、契約期日に基づき建物の引渡し(鍵の引渡し)を弊社の立会いのうえで行い、全てが完了します。
- ただし、検査時の生ずる要望追加工事については、引渡し後の完了となる場合があります。建物使用に当り、所轄消防署へ建物使用開始に関する届出が必要な場合があります。
完成後
建物を使用すると不具合や不都合に気づくことがあります。工事による不都合は施工者に手直しを申し入れ、速やかな作業をうながします。
また、完成後1ヵ年点検や2ヵ年点検を実施(請負契約書の保障期間による)し、工事による不具合(瑕疵など)については、同様に手直しを申し入れ、速やかな作業をうながします。
その後、不具合が発生した場合はその原因を究明し、工事による不具合が明確になれば(第三者判断を要する場合があります)手直しを申し入れます。弊社は長期に渡り対応いたします。
- 社団法人愛知県建築士事務所協会「建築設計事務所の仕事」
- 社団法人東京都建築士事務所協会「設計から工事完了まで」